生物界で火を起こすことができるのは人間だけといいます。
現代では、スイッチを入れればすぐに火が使える生活となりました。
生活に不可欠な火が便利に使いこなせるようになったものの、「火を起こす」という経験からは離れていってしまっています。
ガスや電気が使えなくなった時に、生死を分けるのは自身のサバイバルテクニックです。
安全な水や食料を確保するためには、火は必要不可欠。
アウトドア体験を通じて、原始的な火起こしのサバイバルテクニックを習得しましょう。
ボッと火の上がる瞬間は、大きな達成感を感じることができますよ。
当記事のコンテンツ
火起こしの前に準備するもの
マッチやライターなどの道具を使わずに火を起こす場合、その種火はとても小さいものになります。
その種火を炎にするために必要なのが火口(ほくち)です。
炎にするためには、火口で赤い小さな種火をやわらかく包み、慎重に息を長く吹きかけ、煙が出てきたらさらに空気を送り込み炎にします。
麻ひもでチャークロスを包むなど、火口をあわせての使用も効果的です。
火口(ほくち)の種類
チャークロス
出典:amazon
チャークロスとは、綿100%の布が原料の消し炭のことです。
ゆっくり安定して燃焼が続くのが特徴。
チャークロスとして販売されている商品もありますが、自分で作るのも簡単です。
蓋のある空き缶の蓋に小さな穴を開け、綿100%の布を入れて火にかけます。
この時、布を隙間なく詰めるのがポイント。
次第に煙が上がり、煙が出なくなったら火から下ろして冷めるのを待ちます。
熱いうちに酸素に触れると、炭にならずに一気に燃え尽きてしまうので、蓋を開けるタイミングには注意が必要です。
麻ひも
出典:ブッシュクラフト.JP
麻の火口は、100均でも手に入る材料で簡単に作ることができます。
15cmほどに切った麻ひもの撚りをほどいてほぐし、塊にして完成です。
大きければ大きいほど、燃焼時間が長くなるので力量に合わせて調整しましょう。
フェザースティック
出典:unsplash
フェザースティックは、木の棒をナイフで薄く削り重ねて羽毛(フェザー)のようにしたものです。
火口として使用する場合は、薄いフェザーでなければ小さな火種からは燃え始めないので、ボリュームのあるフェザースティックを作る高度なナイフテクニックが必要になります。
燃えやすい素材
他にも家庭ですぐに手に入るものや、自然のもので燃えやすいものもあります。
それぞれに特徴がありますので、覚えておくと役に立ちます。
松ぼっくり
自然の着火剤ともいわれるほど、一般的で手に入りやすいのが松ぼっくりです。
燃焼時間も長いので、しっかり火がうつれば長く火を保つことができます。
杉の枯れ葉
杉の枯れ葉も手に入りやすい植物のひとつ。
あっという間に火が移り燃えやすいですが、燃え尽きるのも早いのでたくさん集める必要があります。
ティッシュペーパー
火花だけでも燃えることがあるのがティッシュペーパー。
ただし、一瞬で燃え尽きてしまうので使える場面は限られてくるかもしれません。
新聞紙
出典:unsplash
家庭で手に入る着火剤として役立つのが新聞紙。
ねじったり、くしゃくしゃと空気を含むようにして使うのが火を長持ちさせるコツ。
新聞紙は燃えると灰が舞いやすくなるので、うちわであおぐのではなく火吹き棒を活用するといいでしょう。
火起こしの方法
きりもみ式
出典:仮説社
材料も少なく最もシンプルな火起こし法です。
火起こしといえばこの姿をイメージする人も多いのではないでしょうか。
火きりうす(穴を開けた板)に火きりぎね(まっすぐの棒)を立てて手で挟み、手をこすり合わせるようにして摩擦で火をおこします。
重要なのが、回転だけでなく上からの圧力。
回転させつつ上から圧力をかけることで、強い摩擦熱が生まれます。
削り粉から煙が出始めたら、火種の完成です。
そっと火口にうつし、酸素を送り込みましょう。
かなり根気のいる火起こし法ですが、達成感も大きいです。
弓ぎり式
出典:仮説社
きりもみ式をさらに効率化した方法が弓ぎり式です。
弓なりになった木の両端に紐を固定し、弓を作ります。
弦の部分を火きりぎねに巻き付け、弓を前後することで木が回転し摩擦熱が生じます。
この時、圧力をかけてスムーズに回転するよう火きりぎねの上部に軸受けとなる角材をつけて抑えます。
ひもぎり式
出典:仮説社
作業できる人が2人いるのであれば、ひもぎり式にもチャレンジできます。
きりもみ式同様、摩擦熱で火を起こす方法です。
ひもぎり式は、巻き付けた紐の両端を持ち交互に引くことで木を回転させます。
ひもぎり式のポイントは、軸受けとなる板を抑える人と息を合わせる事。
抑える力が強すぎるとうまく回転せず、弱すぎるとバランスが崩れたり圧力がかからず火起こしに時間がかかります。
絶妙な力加減を見つけていくおもしろさがあります。
レンズ発火法
出典:レンズ屋虫めがね
太陽光がレンズや鏡によって1点に集まることを収れん現象といいます。
その収れん現象を活用して火をおこす方法です。
ポイントは、光を1点に集めて熱を蓄積するようにすること。
色が黒い方が着火しやすいので、火口はチャークロスがおすすめです。
スチールたわしと乾電池
出典:info新潟
家庭にあるもので火を起こす方法もあります。
用意するものは乾電池とスチールのたわし。
単1乾電池2個を、プラス面を下にして引き延ばしたスチールたわしの上に固定します。
乾電池を2つつなげ、上部のマイナス面に反対側のスチールたわしを接触させると、火花が上がります。
接触させる際は、素手ではなく割りばしなどを使うと安全です。
注意点は、予想以上に大きな火が出るので必ず野外で行うこと。
火打ち石
出典:amazon
火打石は、石を鋼で叩いて発生した火花を火口にうつして発火させる方法です。
用意するものは、メノウ石や黒曜石などの特定の鉱石と火打ちがねです。
火打石は、角が丸くなると火花が飛ばなくなるので、打ち付ける場所にも注意が必要です。
チャークロスを石に重ねて持ち、火花をうつします。
最近では、火打石が進化したものとしてファイヤースターターが主流となっています。
原始的な火起こしにチャレンジしてみよう
現代では、便利なバーナーや着火剤などですっかり簡単に火を起こすことができるようになりました。
キャンプでも火を使う機会は多いですが、なかなか自分で火を起こすことはありません。
時には便利な道具を手放して、原始的な火起こしにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
自身がサバイバルテクニックを習得することで、子どもに伝えていくこともできます。
身についた経験は、いざという時にも必ず役立ちます。