自然の中で快適に過ごすために火は欠かせません。
サバイバル時には火の有無が生死を分けることもあります。
キャンプでの火の役割は多岐にわたり、焚き火として眺めるだけでなく、調理をしたり暖を取ったり、明かりになったりと、キャンプの快適さを向上させてくれます。
簡単なようで実は難しい薪の火起こしも、基本知識とコツを抑えれば誰でも気軽に楽しむことができます。
今回は基本的な薪の火起こしについて紹介しますが、経験を積むごとにアレンジしてレベルアップしていくのもアウトドアの醍醐味ですね。
当記事のコンテンツ
火起こしの基本知識
火の性質
物が燃えるというのは、物から熱が出ている様子のこと。
火が明るく見えるのは、燃えている物が高温になっているからです。
ろうそくやライターの火のように炎を出しているものだけでなく、炭火や電熱線のように赤くなるだけの状態も火です。
薪が燃えると熱が出て、木の中にある燃える物質が気体になり、その気体が燃えることでまた大きな炎になります。
燃え残った粒子が煙となり、あとには灰が残ります。
薪が燃える条件
物が燃えるためには、「可燃物」「酸素」「熱」の3つの条件が必要です。
これを「燃焼の3原則」と言います。
この3つの要素のうちどれか1つでも取り除くと、燃焼が止まり火が消えます。
消火の方法には、可燃物を取り除く「除去消火」熱を奪う「冷却消火」酸素を遮断する「窒息消火」があります。
つまり3つの条件を遮断することで、火は消えるということです。
火起こしのコツ
出典:齋藤木材工業株式会社
薪を使い分ける
薪には、燃えやすい針葉樹と火持ちがよく長い時間燃える広葉樹の、大きく2種類に分けられます。
針葉樹と広葉樹の見分け方は、持ち比べると針葉樹は軽く広葉樹の方はずっしりと重みがあります。
針葉樹は乾燥すると樹皮が剥けそうであるのに対し、広葉樹は樹皮がゴツゴツとしっかりとしているのが特徴です。
この2つの種類の薪を使い分けるのが、薪の火起こしの大きなコツともいえます。
初めは燃えやすい針葉樹の薪に火をつけてから、広葉樹の薪をくべていくようにすると長時間安定して火を燃やし続けることができます。
キャンプ場によっては広葉樹の薪のみの販売ということもあるので、焚き付け用の小割の薪を用意しておくと安心です。
広葉樹の薪しか用意できない場合は、できるだけ細く薪を割ることが重要になります。
乾燥している薪を使う
薪の内部に含まれる水分が多いと着火しにくいので、火起こしには乾燥している薪を選ぶようにしましょう。
水分の多い薪は燃えにくいだけでなく、煙が多く発生し、バチっと大きな火花をとばして爆ぜる危険も生じます。
使っていない薪は地面にそのまま置くのではなく、シートやスタンドを活用して乾燥させておくとすぐに使うことができます。
薪同士を打ち付け合って高い音がする、年輪の部分にひび割れがある、断面が冷たい感じがしないなどが乾燥した薪の特徴ですので覚えておくと役に立ちます。
酸素の通り道を意識する
薪を組む際は、酸素の通り道を意識して組みましょう。
基本的な組み方としては、井桁に積み上げるキャンプファイヤー型や炎の上がり方が美しいティピ型があげられます。
熱い空気は下から上に上昇していくので、着火剤は1番下に配置します。
薪を追加していく際も、酸素の通り道を意識してくべていきましょう。
薪の火起こしに必要なアイテム
耐熱性グローブ
出典:amazon
火傷や怪我から手を守るために、火起こしの際にはグローブを着用しましょう。
火を使うので、軍手よりも耐熱性のグローブがおすすめ。
耐熱性グローブは厚手の物が多いので、火を使う作業だけでなくテントの設営や防寒にも役立ちます。
牛革でできている物がほとんどで、耐熱性はおよそ120℃。
熱い調理器具を移動したり、新しい薪を追加したりと、直接火のついたものに触れるような使い方でなければ、十分熱に耐えることができます。
耐熱性グローブは厚みがあり、初めは硬くて手にフィットしないというデメリットもありますが、使えば使うほど手に馴染んで柔らかくなってくるので、愛着の湧くアイテムのひとつでもあります。
薪を割るための刃物
購入したままのサイズの薪にそのまま火をつけるのは難しいので、小割の薪を作る作業が必要になります。
その時に必要になるのが薪割りの道具です。
キャンプ場で使う薪割りの道具としては、大まかに3種類あります。
手斧
出典:amazon
手斧は刃が分厚くずっしりとしているのが特徴。
重量を利用して薪を割るので、小さな力で薪を割ることができます。
キャンプ場の薪割りで利用する際は、全長35~45cm程度のものがおすすめ。
重量があるほど薪を割る力は強いですが、重すぎると腕や持ち運びの負担になるので注意が必要です。
鉈
出典:amazon
細長い刃にハンドルを取り付けた鉈は、手斧より軽く細かな作業のしやすい刃物です。
鉈には両刃と片刃の2種類があり、硬めの薪を割るなら両刃の方が安心。
一方で片刃には、木工やフェザースティック作りなど万能に使えるメリットがあります。
片刃でも針葉樹のような薪であれば、問題なく割ることができますので、使うシーンを考えて選ぶといいですね。
ナイフ
出典:amazon
手斧や鉈ほどのパワーはありませんが、バトニングという手法を使ってナイフでも薪割りができます。
この時に大切なのは、ナイフの選び方。
ブレードがハンドルの端まで通ったフルタングナイフで、少なくとも厚み3mm以上、刃長10cm以上のナイフを選びましょう。
割れる薪のサイズや硬さに制限がありますが、持ち運びやすく万能に使えるのがナイフのメリットです。
火吹き棒
出典:amazon
炎を燃え上がらせるために必要なのが酸素です。
酸素を送るために役立つのが火吹き棒。
うちわなどで代用する方法もありますが、灰や火の粉が思わぬ方向に飛ぶことがあるので、ピンポイントで風を送ることができる火吹き棒を1つ持っておくと重宝します。
焚き火台
出典:amazon
キャンプ場では直火禁止のところが多くありますので、焚き火台の用意が必要です。
焚き火台にはコンパクトに収納できるタイプの商品や、組み立ての必要ない簡単設置の商品など、様々な形状のものがあります。
また、焚き火台の大きさによって火の大きさも変わってくるので、使用する人数によっても使い分けるといいでしょう。
焚き火台を使用する際は、基本的に焚き火シートの併用がマナーとなっています。
着火剤
簡単に薪の火起こしを行うために、着火剤があると便利です。
着火剤には固形の物や液体の物、自然の中で手に入る物などの種類があります。
それぞれにメリット、デメリットがあり使い勝手が違うので、自分に合った着火剤を使用するのがいいでしょう。
ライターなどの熱源
出典:ユニフレーム
いざ火をつける際に必要になるのが、ライターなどの熱源になります。
アウトドアでの使用には、風の影響を受けにくいターボライターがおすすめ。
着火棒が長い商品はコンパクトさには欠けますが、安全に着火剤に火をつけることができます。
上級者になると、マッチやライターを使わずにファイヤースティックや自然の力を利用して火起こしをすることを楽しむケースもあります。
火起こしの手順
火起こしの基本は「少しずつ火を大きくしていく」です。
着火剤と太い薪を並べて火をつけても、火はすぐに消えてしまいます。
細い薪から少しずつ太い薪に火を移していくイメージで、「燃やし続ける」ことを意識して時間をかけて火を育てていきましょう。
①薪を割る
まずは、小割の薪を作っていきます。
今回は、ホームセンターなどで販売されている針葉樹の薪を使用します。
薪割りが初めての方や初心者の方には、節のない薪がおすすめ。
キャンプ場で販売されている薪は広葉樹が多く、慣れないバトニングでは歯が立たない場合もあります。
あらかじめ小割にされている薪や、割りやすい針葉樹の薪を多めに用意しておくと安心です。
ナイフでのバトニングは、木の繊維に沿って刃を当てるのが基本。
このタイプの針葉樹であれば、それほど気にしなくても軽い力で次々と割れていきます。
1本の薪から、これだけの小割の薪が作れました。
②薪を組む
焚き火台の上に薪を組んでいきます。
着火剤には、松ぼっくりを使用しました。
市販の着火剤を使用する場合も松ぼっくりと同様、薪の下に来るように置きましょう。
初めからたくさん組む必要はありません。
火の向きや大きさを見て、必要な場所に徐々に薪を足していくのがポイントです。
薪の量が多ければそれだけ火は大きくなりますし、少なければ小さくなります。
燃える薪がなくなってしまえば火は消えてしまいますので、見守りながら調整しましょう。
③着火剤に火をつける
あとは着火剤に火をつけて薪に火が移ったことを確認しながら、薪を追加していくだけです。
ここから先のよくある失敗は、投入する薪のサイズと火の勢いが合わずに新しい薪に火が移る前に、燃えている薪が燃え尽きてしまうこと。
そういった時は、新しい薪をよけて再度少しずつ火を育てていきましょう。
ソロキャンプなどのコンパクトな焚き火台では、少し目を離した間に火が消えかかっていることもよくある失敗です。
小さな火種が残っている場合は、火吹き棒で息を吹きかけてみましょう。
赤く熱が広がり、ボッと炎が復活する瞬間はとても感動的です。
絶対にしてはいけないこと
着火剤を継ぎ足してはいけません!!
火が弱くなった時に絶対にしてはいけないことは、ジェル状の着火剤を追加投入することです。
着火剤の成分の中には揮発性や燃焼性の高い物が多いので、継ぎ足しの際に炎が大きくなり他の物に燃え移ったり、容器ごと燃えて大やけどを負うこともあります。
乾燥した固形タイプの物であれば問題ないとされていますが、細心の注意が必要です。
少しだけ火の勢いが欲しいという時には、割りばしやティッシュペーパー、乾いた杉の葉などが活躍しますよ。
片付け方法
初めての火起こしで、不安になるのが燃やした薪の片付け方ではないでしょうか。
基本的なルールは「真っ白な灰になるまで燃やし尽くす」です。
そのためには、事前に投入する薪の量を考えなければなりません。
目安としては終わりにしたい時間からおよそ1~2時間前には、薪の投入をやめるとちょうどいいといわれています。
とはいえ、全ての薪を灰にするのは実はとても難しいです。
大きな木片が残ったり、熾火の状態のままなかなか火が消えなかったりします。
就寝時間やチェックアウトの時間が迫る中、少しでも早く片づけたい場合の2つの方法をお伝えします。
薪を重ならないように広げる
出典:HONDA
あと少しで灰になる状態であれば、重なっているところがないように細かくしてバラバラに離しておきます。
こうすることで、完全に灰になるまでの時間を短縮できます。
風が強い時は、灰が舞わないよう焚き火シートを被せるなどしておくといいでしょう。
密閉して消火する
出典:HONDA
まだまだ灰になるまで時間がかかりそうな場合は、火消し壺が役立ちます。
火消し壺の原理は酸素を遮断して火を消すので、密閉できる缶や厚手のアルミホイルなどでも代用できます。
この時、火消し壺や缶はかなり高温になるので手を触れないよう注意しましょう。
子どもの手の届かない場所においたり、同行している人達に周知しておくことを忘れずに。
[緊急手段]水につける
出典:HONDA
熱を持っている薪を完全に冷ますには、非常に時間がかかります。
緊急にとにかく早く消化したい場合には、1本ずつ水につける方法があります。
しかし、この方法は余計に後片付けが大変になるほか、水蒸気によるやけどなどの危険もありますのであまりおすすめできません。
水に浸けて消火した薪は、自然に戻ることはありません。
水中の木くずを含め、そのまま自然に流してもいいというわけでは決してありません。
必ずキャンプ場の指示に従ってしっかりと処分しましょう。
あくまでも、緊急的な手段として知っておく程度がいいと思います。
焚き火台に直接水をかけるのは絶対にNG!
燃えている複数の薪に水をかけると、灰と水蒸気が大きく立ち上り火傷する恐れがあります。
焚き火台が変形する原因にもなりますので絶対にやめましょう。
同様の理由から、バケツの中に入れる時も必ず1本ずつゆっくりと入れる必要があります。
基本知識とコツを知って火起こしをマスターしよう!
今ではあたりまえに持っている知識でも、初めての頃は知らないことばかり。
着火剤と購入したままの太い広葉樹だけ持って行き、火起こしに大失敗したこともあります。
今回の記事では、基本的な薪の火起こし方法を初めての方にもわかりやすくお伝えしました。
これからキャンプを始める方や、初めて焚き火を楽しみたい方に少しでも参考にしていただけたらと思います。